九回目 確変期
九回目
〜
藍河マリヤの能力は特殊。
サモンドラゴンの形が自分が最も望むものに変わると言う能力。
巨大な盾になり、全方位のレーザー射出機にもなる。
レイの能力は強力。
シャイニングレイを使うにあたり、女神の力を借りずともシャイニングレイが撃てる。
五連撃でも、一撃でも、自在に火力の幅を調整できる。
戦闘が始まり、まず藍河はサモンドラゴンを強力な砲に変える。
擬似シャイニングレイをレイに向け射出するが、それをレイは『テレポート』で瞬時に回避した。
瞬時にレイはシャイニングレイを藍河に放つ。
藍河はテレポートが使えない。サモンドラゴンを再び変形させ三角形の『ガード』に変え、防御する。
そして藍河の動きはそこで止まる。
レイの執拗なシャイニングレイの連射により、藍河はそこに『防御』のサモンドラゴンを
残し続けねばならない。『攻撃』に転ずることが出来ないのだ。
一撃。強力なシャイニングレイを投げた後、レイはテレポートを使用する。
藍河の側に高速で近づくためだ。
それを見て藍河はガードの展開を止め、攻撃に転じる。
サモンドラゴンを砲撃形態にし、シャイニングレイを射出。
レイはそれを再び『テレポート』で回避する。
「単細胞だな」
レイは、藍河の側に接近することに成功する。
超高速で藍河の顔面に向け、拳を放つ。
「そっちだって単細胞だろ!」
発言と同時に、藍河はレイの拳を見切り回避する。
おかえしとばかりに、藍河もレイの顔面に拳を放つ。
「お前もな」
が、レイも発言と同時にテレポートで後ろに緊急回避する。
「っづ・・・!いちいちこざかしい!!」
藍河はサモンドラゴンとは違う、魔力を発生させる。
MPムチ。
「これで破壊させろおおおおおお!!」
いくつもの敵を破壊してきた、藍河の暫定必殺技。
大量の魔力で構成されたMPムチを直進させ、その勢いで相手を破壊する技。
が、レイは片腕をMPムチに向けるだけだった。
「破壊だ」
手がMPムチと触れると同時に、シャイニングレイを発生させ『ただの魔力の塊』である
MPムチを破壊した。いとも簡単に。
しかし藍河はまだ怯みたくない。
サモンドラゴンを近くに寄せ、再び砲撃体系に変え、シャイニングレイを射出する。
レイもそれに合わせ、シャイニングレイを射出。
中で両者のシャイニングレイはぶつかり、光を放つ。
その光は、時間がたつにつれてゆっくりと消えていった。
・・・互角だったのだ。
藍河マリヤの能力の方が応用がきき、構築しだいで火力も跳ね上げることができる。
しかし、レイの能力の堅実さには、今の藍河はついていくことが出来ていなかった。
「マジかよ。・・・」
「・・・足りねぇな」
「あ?」
「実力だ」
そう言い放つと、レイは右腕に魔力を溜め、シャイニングレイに変換する。
右腕は光を放ち始める。
「全てにおいて発展途上。ある意味原石・・・。
・・・ぶっ壊すのは忍びないが、しょうがないことだ」
「・・・。何がだ!?」
「・・・藍河マリヤ、お前は俺が殺すと決めたからだ」
レイの目には、明確な殺意があった。
常人なら一歩も動けないだろう。藍河も常人に近いところがあるのだが、
今の藍河は少なくとも常人ではない。・・・ため。
「・・・殺せるモンなら、壊してみろ・・・藍河マリヤをなあぁ!!」
藍河マリヤは激高する。
その迫力は、今まで藍河が見せていたぬるい気迫ではない。
藍河マリヤの『破壊癖』が見せる、一種の凶暴性。
サモンドラゴンはその声に答え、全方位型のレーザー射出機に姿を変える。
「がああああああああああああああああ!!」
「壊・・・!」
レイは危険性を感じ、破壊しようとする。
しかし間に合わないタイミングだった。
・・・のだが、サモンドラゴンは・・・消えた。
レーザーを全方位に射出する前に消えたのだ。
「・・・え?は!?」
『時間切れ』である。
「・・・何だ?」
「しまっ・・・!」
これに乗じて、レイは藍河の顔面に一撃を入れることに成功する。
「・・・がぁ・・・」
サモンドラゴンの限界詠唱時間は『140秒』
すでに、二分二十秒経ってしまったのだ。
藍河マリヤはこのことを失念していた。
致命的な失念。
「じゃあな」
レイは腕をひねり、ひねりを戻す反動を勢いに乗せ、藍河の腹に強力な一撃をカチ当てる。
手を腹に当てたまま、レイは呪文を詠唱する。『シャイニングレイ』と。
シャイニングレイは藍河の腹から背中にかけて貫通し、
放射状にシャイニングレイは藍河の背中から出てきた。・・・致命的な一撃である。
「・・・・・・・・・・・ぁ・・・」
藍河は吹き飛び、倒れた。
・・・レイが出発30秒前の船に乗るまでの間、藍河マリヤは動くことはなかった。
「・・・ぐ・・・ぁ・・・・・・ぁ・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
〜
「・・・やられたくぁ?ま、レイは俺の次に強い。
しかしあの状況で、サモンドラゴンが切れるとは神のタイミングだな」
「・・・・・・頼りにならない・・・ブツブツ・・・」
ぼやくホシミと、デビル。
二人は、窓から観戦していたようだ。
「戻った」
「おかえりー」
レイを歓迎し、一同は改めて船に乗り込む。
「じゃ行くかー!!」
「元気だなスペル」
「任務終わるしな!!」
〜
「・・・・・・。・・・」
藍河マリヤが目を覚ますと、目の前には何もなかった。
船ももう、出てしまったのだろう。
レイも、船に乗り込んだのだろう。
ホシミも、連れさらわれてしまったのだろう。
・・・何故、僕はこんなことになった。
S級犯罪者になり、そして能力を侮辱され、負けた。
体の中に生まれる闇を、日本の足では支えることが出来なくなる。
藍河はその場に座り込み、考える。
「・・・・・・僕は・・・」
常識的に考えて、この状況はもう終わってしまっただろう。
幹部を倒したとはいえ、残り何人もいる。・・・その一人に勝てなかった。
そもそも何故ここに来たのだろう。
ホシミと出会ったから?
だから特A犯罪者『デビルプリースト』に絡まれた?
だからS級犯罪者にされた?
・・・どの道、藍河はもう普通の生活は出来ないだろう。
ビクトリアアイランドに、藍河の居場所はない。
しかしいいこともある。
能力だ。
ホシミからもらった能力。『プリースト』であり『サモンドラゴン』だ。
この能力を完璧に使いこなせば、S級犯罪者を演じることも容易だろう。
実際、藍河はエリニアを壊滅させた。
今でも追っ手が来ていないのが、その破壊力の大きさを物語る。
『破壊癖』を持つ藍河が、ソレを演じるのは何も難しくない。
藍河がその破壊に身を任せてしまえば、ビクトリアは火に染まる。
・・・実際、藍河マリヤは揺れていた。
全てを壊してしまいたかった。
もう、普通をやめたかった。
疲れたのだ。
・・・本当は情けなさから脱却したかった。
『貴族』を助けたかった。
無理だった。
「・・・・・・・・・破壊か・・・」
ふと、藍河マリヤは手を眺めた。
手から思い出すは、自分の手に触れてくれて、力をくれたホシミの顔。
「・・・・・・なんて言ったっけなぁ・・・。エルナスまで連れてく、だっけ?」
藍河マリヤは微笑する。
「・・・適当な理由つけて、そこまで着いていきたかったのか・・・。
それとも・・・」
『ビクトリアに用はないの』
『浅い能力だ』
『失敗作』
『一次のなりそこない』
『役に立たない』
『興醒めだ、雑魚』
『悪』
『偽善者』
『・・・大丈夫、藍河は強いから』
ふと藍河は、嫌な笑いを浮かべる。
「・・・何が、だろうねぇ。・・・嫌だね。
・・・でも、このまま一人だと、『壊れる』のが落ちか。」
そして、立ち上がり、前へ、前へと歩を進める。
「一人じゃあ地獄は怖いな・・・」
藍河はアイテムボックスからどさくさに紛れて取っておいた召還の石を取り出し、
サモンドラゴンに展開させる。
「僕を『オルビスまで連れて行ってくれ』」
その声にサモンドラゴンは答え、形を変える。
サモンドラゴンの姿はスケートボードのようであり、中に浮いていた。
コレなら中を舞い飛び、オルビスまで行けるだろう。
藍河はサモンドラゴンに乗り、空を飛び始める。
目的地は、無論オルビス。
ただオルビスを目指すその表情に正義感は見られない。
あるのは歪んだ笑いと、狂気の目。
「壊してやるよ。
一緒に地獄までついて来い・・・『デビルプリースト』に・・・『貴族』!!!
全部ぶっ壊してやらぁぁぁぁぁぁ!!」
藍河マリヤは空を豪快に滑空し、オルビスへと向かう。
そこに『お兄さん』の面影はない。破壊の権化かもしくはただの犯罪者か。
不のエネルギーが暴発し、藍河マリヤはその破壊癖に、身を任せてしまった。
藍河は、自分をこんな目に合わせた連中を、全て『破壊』するだろう。
・・・。
ああ、この小説はどうなってしまうのだろうか。
オルビスの船は、十分でオルビスに着く。
藍河マリヤのサモンドラゴンは、その船よりも僅かに速い。
出会うタイミングはどうなるのか。
その答えは、十分後、出る。
・・・。
時は少し戻る。
場面は貴族、ルディブリアムの本部・・・その一室。
『ルディブリアム』は部屋で一人、デビルプリーストの任務達成を待つ。
手にはシャープペンシル。ノートに女の子の絵を大量に描いていた。
「無意味にたぎるー。無意味にたぎるー!たぎるぞおおおぉぉ!!」
そうして無意味にたぎっていると、不意にドアをノックする音が聞こえる。
「ちょ・・・。邪魔を。・・・ゴホン。どうぞ、誰ですか?」
「牙情レンガだ」(がじょうれんが)
その名前を聞くと、牙城レンガをルディブリアムは部屋に招きいれた。
牙情レンジ、その眼光は真っ直ぐとしており、整った赤みのかかった髪。
魔法使いらしからぬ動きやすい、ビンテージフードに身を包んでいた。
元主人公、藍河マリヤとは違うどこか『頼りになりそう』な要素があった。
「・・・作業の邪魔でもしたか?」
「いえいえ、別に何でもないですよ。お気になさらずね・・・。
どうしましたレンガ?」
ルディブリアムはそそくさとノートをしまい、牙城レンガの話を聞く。
「エルナスの貴族をさらっている、S急犯罪者はまだ・・・?」
「・・・。まだ捕まっていませんね。迷惑な話です。早急に捕まり、早くホシミを・・・」
「・・・許せねぇな」
「?・・・はい?」
「人が弱ってるときに、わざわざさらって魂胆を練ってる。
・・・ルディブリアム、俺はいい加減限界だ!なんでエルナスがこんな目に合うんだ!?」
「・・・。エルナスが観光に行ったときに、さらわれる。
ちょうどそのとき、デビルプリーストが襲っただけです。
・・・運命なんてそんなもんでしょう?都合の良い様悪い用は紙一重です」
ウソである。
「人の都合も入ってるだろ、それ・・・!
デビルプリーストがいなきゃよぉ、こんなことにはならなかったんだ!」
「・・・そうでしょうね。やれやれ、我々は何のための『最上級ギルド』なんでしょうねぇ。
都合のいい正義なんてない、ってことでしょうね」
「そんなこと言うなルディブリアム!
都合のいい正義があることを証明してやる・・・。俺を行かせろ。
俺にS級犯罪者にデビルプリーストを全部倒させろ!もう許せないんだ!」
「・・・貴族という肩書きはありますが、一応最上級ギルド。
軽々しくは動けないんですよ?」
「・・・頼む!」
「・・・。・・・いいでしょう。しかし貴族なんですから、負けは許しませんよ」
「・・・ありがたい!行ってくる!!」
牙情レンガは自分が信じる、その感情に身を任せている。
自分を信じ、エルナスを救うために、牙情レンガは部屋を後にする。
しかし牙情レンガは、一般人は、その情報の裏を見ることは出来ない。
「・・・気持ちいいぐらいに正義感に溢れてますね。主人公じゃあるまいし・・・。
ちょっとは考えることが必要だと思うんですけどねぇ・・・」
・・・黒幕が目の前にいるのに、牙情レンガは気がつかない。
牙情レンガは、デビルプリーストを倒そうとしているが、
勝とうが負けようがどっちにしてもホシミはルディブリアムの手元に入る。
そして牙情レンガはS級犯罪者の『藍河マリヤ』も会えれば倒そうと思っている。
真実を知っているであろう唯一の部外者。
倒してくれるのなら、ルディブリアムにとってこれほどいいこともない。
「ごめんなさいーね、デビルプリースト。牙情レンガはアホ強いですからね・・・」
ルディブリアムは再び席に座り、絵描きを再開する。
しかし、何か思いついたことがあるのか電話を手に取り、連絡する。
相手はデビルプリーストのギルド長ではなく、違う相手。
「デビルプリーストのメンバーはオルビスに着きましたか?」
「まだよ。おまけに五人も転送されてるし、二人幹部だし」
「S級犯罪者って怖いですねぇ・・・」
「アンタが仕向けた格下のくせに何言ってるのよ・・・。
ま、おしおきはしておいたわ。これから本番だから気合を大量に・・・ね」
「怖っ・・・、ってな。ま、気合を大量に。
ウチの元気一杯のバカが、そちらに行ってしまいましたからねぇ・・・」
「あら、大変ね」
「のんきですね」
「ウチの下僕が頑張るだけよ。簡単よ」
「ドMには貴女みたいな人はたまらないんでしょうねぇ・・・。
出来ることなら私はドMになって貴女にお会いしたい・・・。
・・・。切られたか」
さらにルディブリアムはたぎり、落書きを続ける。
〜
もう一度場面は変わり、飛行中の飛行船内。
口を閉ざし、物思いにふけっているホシミ。
「・・・」
「黙ってどうしたぁお嬢さん?」
デビルが、つい話しかける。
「疑わないの?・・・依頼主を、疑わないの?」
「・・・。違うなぁ。そう言う問題じゃない。俺らは『特A犯罪者』だ。
その先に何があろうと知らないんだねぁ・・・。
大体疑ってどうする?正義の味方じゃねぇ。
やることやって、その後おこぼれをもらえたらもらうだけだ」
「・・・」
コイツは嫌いだ。ホシミはそう思った。
嫌いな奴になすがままにされるのは最悪だ。
・・・ホシミは、現状今日に改めて絶望した。
「・・・藍河」
「ん?」
「?!あれ、なんでもない・・・」
「・・・。そうか」
なぜかふと出た『藍河』という名前。
藍河は頼りにならない。ホシミにとっては、あまり好きではない人種。
頼れた人が藍河しかいなかったことも、最悪だった。
そう言ったことを考えると、藍河はあまり好きではない・・・はずなのだが。
どういうわけか、この状況で藍河の情けない顔しか出てこなかった。
「・・・。どういうことよ・・・わけわからない・・・」
「ん?」
「だから、なんでもないって」
「・・・。悪い」
・・・。
藍河マリヤがホシミに、どう・・・うつっているかは分からない。
真っ直ぐな男としてうつっているのか、それが好意になっているのかもしれないが、
今の藍河マリヤはそうではない。
今の藍河マリヤは純粋な破壊を目的とし、船、オルビスに向かっている。
そのS級犯罪者を狙い、牙情レンガもオルビスに向かう。
・・・。破壊が、本格的に、動き始める。
続く。
〜
藍河マリヤの能力は特殊。
サモンドラゴンの形が自分が最も望むものに変わると言う能力。
巨大な盾になり、全方位のレーザー射出機にもなる。
レイの能力は強力。
シャイニングレイを使うにあたり、女神の力を借りずともシャイニングレイが撃てる。
五連撃でも、一撃でも、自在に火力の幅を調整できる。
戦闘が始まり、まず藍河はサモンドラゴンを強力な砲に変える。
擬似シャイニングレイをレイに向け射出するが、それをレイは『テレポート』で瞬時に回避した。
瞬時にレイはシャイニングレイを藍河に放つ。
藍河はテレポートが使えない。サモンドラゴンを再び変形させ三角形の『ガード』に変え、防御する。
そして藍河の動きはそこで止まる。
レイの執拗なシャイニングレイの連射により、藍河はそこに『防御』のサモンドラゴンを
残し続けねばならない。『攻撃』に転ずることが出来ないのだ。
一撃。強力なシャイニングレイを投げた後、レイはテレポートを使用する。
藍河の側に高速で近づくためだ。
それを見て藍河はガードの展開を止め、攻撃に転じる。
サモンドラゴンを砲撃形態にし、シャイニングレイを射出。
レイはそれを再び『テレポート』で回避する。
「単細胞だな」
レイは、藍河の側に接近することに成功する。
超高速で藍河の顔面に向け、拳を放つ。
「そっちだって単細胞だろ!」
発言と同時に、藍河はレイの拳を見切り回避する。
おかえしとばかりに、藍河もレイの顔面に拳を放つ。
「お前もな」
が、レイも発言と同時にテレポートで後ろに緊急回避する。
「っづ・・・!いちいちこざかしい!!」
藍河はサモンドラゴンとは違う、魔力を発生させる。
MPムチ。
「これで破壊させろおおおおおお!!」
いくつもの敵を破壊してきた、藍河の暫定必殺技。
大量の魔力で構成されたMPムチを直進させ、その勢いで相手を破壊する技。
が、レイは片腕をMPムチに向けるだけだった。
「破壊だ」
手がMPムチと触れると同時に、シャイニングレイを発生させ『ただの魔力の塊』である
MPムチを破壊した。いとも簡単に。
しかし藍河はまだ怯みたくない。
サモンドラゴンを近くに寄せ、再び砲撃体系に変え、シャイニングレイを射出する。
レイもそれに合わせ、シャイニングレイを射出。
中で両者のシャイニングレイはぶつかり、光を放つ。
その光は、時間がたつにつれてゆっくりと消えていった。
・・・互角だったのだ。
藍河マリヤの能力の方が応用がきき、構築しだいで火力も跳ね上げることができる。
しかし、レイの能力の堅実さには、今の藍河はついていくことが出来ていなかった。
「マジかよ。・・・」
「・・・足りねぇな」
「あ?」
「実力だ」
そう言い放つと、レイは右腕に魔力を溜め、シャイニングレイに変換する。
右腕は光を放ち始める。
「全てにおいて発展途上。ある意味原石・・・。
・・・ぶっ壊すのは忍びないが、しょうがないことだ」
「・・・。何がだ!?」
「・・・藍河マリヤ、お前は俺が殺すと決めたからだ」
レイの目には、明確な殺意があった。
常人なら一歩も動けないだろう。藍河も常人に近いところがあるのだが、
今の藍河は少なくとも常人ではない。・・・ため。
「・・・殺せるモンなら、壊してみろ・・・藍河マリヤをなあぁ!!」
藍河マリヤは激高する。
その迫力は、今まで藍河が見せていたぬるい気迫ではない。
藍河マリヤの『破壊癖』が見せる、一種の凶暴性。
サモンドラゴンはその声に答え、全方位型のレーザー射出機に姿を変える。
「がああああああああああああああああ!!」
「壊・・・!」
レイは危険性を感じ、破壊しようとする。
しかし間に合わないタイミングだった。
・・・のだが、サモンドラゴンは・・・消えた。
レーザーを全方位に射出する前に消えたのだ。
「・・・え?は!?」
『時間切れ』である。
「・・・何だ?」
「しまっ・・・!」
これに乗じて、レイは藍河の顔面に一撃を入れることに成功する。
「・・・がぁ・・・」
サモンドラゴンの限界詠唱時間は『140秒』
すでに、二分二十秒経ってしまったのだ。
藍河マリヤはこのことを失念していた。
致命的な失念。
「じゃあな」
レイは腕をひねり、ひねりを戻す反動を勢いに乗せ、藍河の腹に強力な一撃をカチ当てる。
手を腹に当てたまま、レイは呪文を詠唱する。『シャイニングレイ』と。
シャイニングレイは藍河の腹から背中にかけて貫通し、
放射状にシャイニングレイは藍河の背中から出てきた。・・・致命的な一撃である。
「・・・・・・・・・・・ぁ・・・」
藍河は吹き飛び、倒れた。
・・・レイが出発30秒前の船に乗るまでの間、藍河マリヤは動くことはなかった。
「・・・ぐ・・・ぁ・・・・・・ぁ・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
〜
「・・・やられたくぁ?ま、レイは俺の次に強い。
しかしあの状況で、サモンドラゴンが切れるとは神のタイミングだな」
「・・・・・・頼りにならない・・・ブツブツ・・・」
ぼやくホシミと、デビル。
二人は、窓から観戦していたようだ。
「戻った」
「おかえりー」
レイを歓迎し、一同は改めて船に乗り込む。
「じゃ行くかー!!」
「元気だなスペル」
「任務終わるしな!!」
〜
「・・・・・・。・・・」
藍河マリヤが目を覚ますと、目の前には何もなかった。
船ももう、出てしまったのだろう。
レイも、船に乗り込んだのだろう。
ホシミも、連れさらわれてしまったのだろう。
・・・何故、僕はこんなことになった。
S級犯罪者になり、そして能力を侮辱され、負けた。
体の中に生まれる闇を、日本の足では支えることが出来なくなる。
藍河はその場に座り込み、考える。
「・・・・・・僕は・・・」
常識的に考えて、この状況はもう終わってしまっただろう。
幹部を倒したとはいえ、残り何人もいる。・・・その一人に勝てなかった。
そもそも何故ここに来たのだろう。
ホシミと出会ったから?
だから特A犯罪者『デビルプリースト』に絡まれた?
だからS級犯罪者にされた?
・・・どの道、藍河はもう普通の生活は出来ないだろう。
ビクトリアアイランドに、藍河の居場所はない。
しかしいいこともある。
能力だ。
ホシミからもらった能力。『プリースト』であり『サモンドラゴン』だ。
この能力を完璧に使いこなせば、S級犯罪者を演じることも容易だろう。
実際、藍河はエリニアを壊滅させた。
今でも追っ手が来ていないのが、その破壊力の大きさを物語る。
『破壊癖』を持つ藍河が、ソレを演じるのは何も難しくない。
藍河がその破壊に身を任せてしまえば、ビクトリアは火に染まる。
・・・実際、藍河マリヤは揺れていた。
全てを壊してしまいたかった。
もう、普通をやめたかった。
疲れたのだ。
・・・本当は情けなさから脱却したかった。
『貴族』を助けたかった。
無理だった。
「・・・・・・・・・破壊か・・・」
ふと、藍河マリヤは手を眺めた。
手から思い出すは、自分の手に触れてくれて、力をくれたホシミの顔。
「・・・・・・なんて言ったっけなぁ・・・。エルナスまで連れてく、だっけ?」
藍河マリヤは微笑する。
「・・・適当な理由つけて、そこまで着いていきたかったのか・・・。
それとも・・・」
『ビクトリアに用はないの』
『浅い能力だ』
『失敗作』
『一次のなりそこない』
『役に立たない』
『興醒めだ、雑魚』
『悪』
『偽善者』
『・・・大丈夫、藍河は強いから』
ふと藍河は、嫌な笑いを浮かべる。
「・・・何が、だろうねぇ。・・・嫌だね。
・・・でも、このまま一人だと、『壊れる』のが落ちか。」
そして、立ち上がり、前へ、前へと歩を進める。
「一人じゃあ地獄は怖いな・・・」
藍河はアイテムボックスからどさくさに紛れて取っておいた召還の石を取り出し、
サモンドラゴンに展開させる。
「僕を『オルビスまで連れて行ってくれ』」
その声にサモンドラゴンは答え、形を変える。
サモンドラゴンの姿はスケートボードのようであり、中に浮いていた。
コレなら中を舞い飛び、オルビスまで行けるだろう。
藍河はサモンドラゴンに乗り、空を飛び始める。
目的地は、無論オルビス。
ただオルビスを目指すその表情に正義感は見られない。
あるのは歪んだ笑いと、狂気の目。
「壊してやるよ。
一緒に地獄までついて来い・・・『デビルプリースト』に・・・『貴族』!!!
全部ぶっ壊してやらぁぁぁぁぁぁ!!」
藍河マリヤは空を豪快に滑空し、オルビスへと向かう。
そこに『お兄さん』の面影はない。破壊の権化かもしくはただの犯罪者か。
不のエネルギーが暴発し、藍河マリヤはその破壊癖に、身を任せてしまった。
藍河は、自分をこんな目に合わせた連中を、全て『破壊』するだろう。
・・・。
ああ、この小説はどうなってしまうのだろうか。
オルビスの船は、十分でオルビスに着く。
藍河マリヤのサモンドラゴンは、その船よりも僅かに速い。
出会うタイミングはどうなるのか。
その答えは、十分後、出る。
・・・。
時は少し戻る。
場面は貴族、ルディブリアムの本部・・・その一室。
『ルディブリアム』は部屋で一人、デビルプリーストの任務達成を待つ。
手にはシャープペンシル。ノートに女の子の絵を大量に描いていた。
「無意味にたぎるー。無意味にたぎるー!たぎるぞおおおぉぉ!!」
そうして無意味にたぎっていると、不意にドアをノックする音が聞こえる。
「ちょ・・・。邪魔を。・・・ゴホン。どうぞ、誰ですか?」
「牙情レンガだ」(がじょうれんが)
その名前を聞くと、牙城レンガをルディブリアムは部屋に招きいれた。
牙情レンジ、その眼光は真っ直ぐとしており、整った赤みのかかった髪。
魔法使いらしからぬ動きやすい、ビンテージフードに身を包んでいた。
元主人公、藍河マリヤとは違うどこか『頼りになりそう』な要素があった。
「・・・作業の邪魔でもしたか?」
「いえいえ、別に何でもないですよ。お気になさらずね・・・。
どうしましたレンガ?」
ルディブリアムはそそくさとノートをしまい、牙城レンガの話を聞く。
「エルナスの貴族をさらっている、S急犯罪者はまだ・・・?」
「・・・。まだ捕まっていませんね。迷惑な話です。早急に捕まり、早くホシミを・・・」
「・・・許せねぇな」
「?・・・はい?」
「人が弱ってるときに、わざわざさらって魂胆を練ってる。
・・・ルディブリアム、俺はいい加減限界だ!なんでエルナスがこんな目に合うんだ!?」
「・・・。エルナスが観光に行ったときに、さらわれる。
ちょうどそのとき、デビルプリーストが襲っただけです。
・・・運命なんてそんなもんでしょう?都合の良い様悪い用は紙一重です」
ウソである。
「人の都合も入ってるだろ、それ・・・!
デビルプリーストがいなきゃよぉ、こんなことにはならなかったんだ!」
「・・・そうでしょうね。やれやれ、我々は何のための『最上級ギルド』なんでしょうねぇ。
都合のいい正義なんてない、ってことでしょうね」
「そんなこと言うなルディブリアム!
都合のいい正義があることを証明してやる・・・。俺を行かせろ。
俺にS級犯罪者にデビルプリーストを全部倒させろ!もう許せないんだ!」
「・・・貴族という肩書きはありますが、一応最上級ギルド。
軽々しくは動けないんですよ?」
「・・・頼む!」
「・・・。・・・いいでしょう。しかし貴族なんですから、負けは許しませんよ」
「・・・ありがたい!行ってくる!!」
牙情レンガは自分が信じる、その感情に身を任せている。
自分を信じ、エルナスを救うために、牙情レンガは部屋を後にする。
しかし牙情レンガは、一般人は、その情報の裏を見ることは出来ない。
「・・・気持ちいいぐらいに正義感に溢れてますね。主人公じゃあるまいし・・・。
ちょっとは考えることが必要だと思うんですけどねぇ・・・」
・・・黒幕が目の前にいるのに、牙情レンガは気がつかない。
牙情レンガは、デビルプリーストを倒そうとしているが、
勝とうが負けようがどっちにしてもホシミはルディブリアムの手元に入る。
そして牙情レンガはS級犯罪者の『藍河マリヤ』も会えれば倒そうと思っている。
真実を知っているであろう唯一の部外者。
倒してくれるのなら、ルディブリアムにとってこれほどいいこともない。
「ごめんなさいーね、デビルプリースト。牙情レンガはアホ強いですからね・・・」
ルディブリアムは再び席に座り、絵描きを再開する。
しかし、何か思いついたことがあるのか電話を手に取り、連絡する。
相手はデビルプリーストのギルド長ではなく、違う相手。
「デビルプリーストのメンバーはオルビスに着きましたか?」
「まだよ。おまけに五人も転送されてるし、二人幹部だし」
「S級犯罪者って怖いですねぇ・・・」
「アンタが仕向けた格下のくせに何言ってるのよ・・・。
ま、おしおきはしておいたわ。これから本番だから気合を大量に・・・ね」
「怖っ・・・、ってな。ま、気合を大量に。
ウチの元気一杯のバカが、そちらに行ってしまいましたからねぇ・・・」
「あら、大変ね」
「のんきですね」
「ウチの下僕が頑張るだけよ。簡単よ」
「ドMには貴女みたいな人はたまらないんでしょうねぇ・・・。
出来ることなら私はドMになって貴女にお会いしたい・・・。
・・・。切られたか」
さらにルディブリアムはたぎり、落書きを続ける。
〜
もう一度場面は変わり、飛行中の飛行船内。
口を閉ざし、物思いにふけっているホシミ。
「・・・」
「黙ってどうしたぁお嬢さん?」
デビルが、つい話しかける。
「疑わないの?・・・依頼主を、疑わないの?」
「・・・。違うなぁ。そう言う問題じゃない。俺らは『特A犯罪者』だ。
その先に何があろうと知らないんだねぁ・・・。
大体疑ってどうする?正義の味方じゃねぇ。
やることやって、その後おこぼれをもらえたらもらうだけだ」
「・・・」
コイツは嫌いだ。ホシミはそう思った。
嫌いな奴になすがままにされるのは最悪だ。
・・・ホシミは、現状今日に改めて絶望した。
「・・・藍河」
「ん?」
「?!あれ、なんでもない・・・」
「・・・。そうか」
なぜかふと出た『藍河』という名前。
藍河は頼りにならない。ホシミにとっては、あまり好きではない人種。
頼れた人が藍河しかいなかったことも、最悪だった。
そう言ったことを考えると、藍河はあまり好きではない・・・はずなのだが。
どういうわけか、この状況で藍河の情けない顔しか出てこなかった。
「・・・。どういうことよ・・・わけわからない・・・」
「ん?」
「だから、なんでもないって」
「・・・。悪い」
・・・。
藍河マリヤがホシミに、どう・・・うつっているかは分からない。
真っ直ぐな男としてうつっているのか、それが好意になっているのかもしれないが、
今の藍河マリヤはそうではない。
今の藍河マリヤは純粋な破壊を目的とし、船、オルビスに向かっている。
そのS級犯罪者を狙い、牙情レンガもオルビスに向かう。
・・・。破壊が、本格的に、動き始める。
続く。
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